NO.022

メイリオ — ClearTypeのために設計された、横組みの日本語ゴシック体

マイクロソフト — 河野英一・シーアンドジイ・マシュー・カーター — 2007
公開 2026-07-20
OFFICIAL — 公式ページ
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出典: Windows標準搭載 のスクリーンショット(2026-07-19取得・引用)

メイリオとは

メイリオは、マイクロソフトがWindows Vista向けに開発した和文のゴシック体です。画面の滑らかな表示技術「ClearType」の効果を最大限に生かすことを目的に設計され、和文部を河野英一氏とシーアンドジイ(C&G)、欧文部をマシュー・カーター氏が担当しました。従来の「MS UI Gothic」に代わる新しいシステムフォントとして、2007年出荷開始のWindows Vista以降に標準搭載されています。

誕生の背景

話の起点は、マイクロソフト社内のART(先端可読性技術開発)グループが掲げていた方針でした。画面上でのフォントのスムージング技術「ClearType」の効果を最大化する新しい日本語フォントを、次期OSであるWindows Vistaに向けて開発するというものです。2005年7月29日、マイクロソフトはこの新フォントの名を「Meiryo」(メイリオ)として公表し、Windows Vistaの日本語フォント環境をJIS X 0213:2004(JIS2004)規格に対応させる方針とあわせて発表しています。

開発の中心にいたのは、ロンドン地下鉄の駅名表示などに使われる書体「New Johnston」のリデザインで知られる英国在住のタイポグラファ、河野英一氏です。2002年4月にマイクロソフトのARTグループに迎えられた河野氏は、新しい日本語フォントのリサーチを開始しました。そこで出会ったのが、東京の書体制作会社シーアンドジイ(C&G)でした。C&Gのタイプディレクター・鈴木竹治氏は、シニア・デザイナーの植田由紀子氏とともに、横組みに適した新しいゴシック体を目指して5年間試作を続けていたといいます。この試作を高く評価した河野氏は、これをClearType和文フォントの原型として採用しました。

欧文部は、河野氏が信頼するマシュー・カーター氏に依頼されました。カーター氏は「Verdana」のデザイナーであり、C&Gの仮名に合わせて改良を加える形で、メイリオの欧文文字を作り上げています。C&Gは4万字以上の和文文字を15カ月で作成し、メイリオはリサーチ開始から2年後にあたる2004年3月に完成しました。

設計の意図

メイリオが向き合った課題は、横方向に文字を読むときの読みやすさでした。開発に関わったC&G側のスタッフは、日本印刷技術協会(JAGAT)のインタビューで、縦組みは文字のセンターラインさえ揃えば読みやすくなるものの、横組みはそれに加えてベースラインという概念が必要になると説明しています。「縦組みは普通に作っても読みやすい。しかし横組みは努力して作らないと読みやすくならない」。この考えのもと、メイリオはベースラインを揃え、仮想ボディいっぱいの字面と、広いふところ(文字の内側の空白)を組み合わせることで、横方向にスムーズに読める設計を目指しました。

和文と欧文のバランスにも力が注がれています。マシュー・カーターがVerdanaをC&Gの仮名に合わせて改良する一方、C&G側もVerdanaに合わせて和文のベースラインを上げ、字形をやや扁平にデザインしました。和文と欧文それぞれのデザイナーが協力して一つのフォントを作り上げた、珍しいケースだったといえます。

画面表示という条件も、字形そのものを決定づけました。輪郭に微妙なカーブや突起を持つ従来のゴシック体は、ドットで構成される画面上ではジャギー(輪郭のギザギザ)になりやすいため、メイリオは極力水平・垂直線で構成し、カーブは緩やかなラインにする方針で設計されています。加えて、内蔵ビットマップに頼らず膨大なヒンティングデータ(画面表示時に輪郭を微調整する情報)を盛り込むことで、小さいサイズでもアウトラインのまま綺麗に表示できるようにしました。

名前の由来は、日本語の「明瞭」です。開発チームのスタッフの発音が「メイリオ」に聞こえたことに加え、河野氏本人が「メイがいい響きだし、リオはエキゾチック。それに『メイリョウ』より1文字減らせる」と語ったと伝えられています。

どこで使われているか

もっとも大きな採用実績は、パソコンOSへの標準搭載です。2007年出荷開始のWindows Vista以降、マイクロソフトの各OSに標準搭載され、Microsoft Learnの公式書体ページには、Windows Vista、Windows Server 2008、Windows 7、Windows 8、Windows 8.1、Windows 10、Windows 11という提供実績が一覧されています。Office製品でも利用可能とされています。

Windows XPやWindows Server 2003向けにも、2007年12月公開のVisual Studio 2008 Express Editionへの同梱を経て、2008年5月にメイリオ単体のClearType対応フォントとして公開されました。Mac OS Xでも、2008年発売のMicrosoft Office 2008 for Mac日本語版、2010年発売のOffice 2011 for Mac日本語版にそれぞれ同梱されています。2009年11月には、リボンUIなどのユーザーインターフェース部品向けに再設計した「Meiryo UI」を含む無償アップデートも公開されました。

メイリオは2007年、東京タイプディレクターズクラブの「東京TDC賞2007 タイプデザイン賞」を受賞しています。受賞者は河野英一、シーアンドジイ(坂本達・鈴木竹治・植田由紀子)、マシュー・カーターの各氏です。2007年度のグッドデザイン賞を受賞したとも紹介されていますが、受賞コメントなどの詳細は公式には確認できていません。

その後の世代でのOS内での役割分担については、公式資料での明記は見当たらず、伝聞の域を出ません。Windows 8ではMeiryo UIがユーザーインターフェース全面で使われ、Windows 10ではシステムフォントの座を游ゴシックUIに譲ったと広く語られていますが、この世代ごとの詳細はマイクロソフト自身の一次資料では確認できていません。

FAQ
メイリオは商用利用できますか?

Windows・Office同梱版の利用条件はOSやOffice製品のライセンスに従います。Adobe Fonts経由であれば、Creative Cloud契約の範囲内でレギュラー・ボールドの2ウエイトを個人・商用利用ともに使えます。いずれの場合も、詳細な条件は必ず公式サイトで確認してください。

メイリオとMeiryo UIの違いは何ですか?

Meiryo UIは、リボンUIなどユーザーインターフェース部品での利用に最適化して再設計されたフォントで、Windows 7で新たに追加されました。メイリオが本文表示を主眼に設計されたのに対し、Meiryo UIはメニューやダイアログなど画面部品向けの調整が加えられています。

メイリオという名前の由来は何ですか?

日本語の「明瞭」に由来するとされています。開発チームのスタッフの発音が「メイリオ」に聞こえたことに加え、デザイナーの河野英一氏本人が語感の良さと「メイリョウ」より1文字短いことを理由として挙げたと伝えられています。

SOURCES — 参考文献・出典11 REFS
[01]メイリオ | Wikipedia[02]メイリオのフォントデザイン | 日本印刷技術協会(JAGAT)[03]2年がかりの新日本語フォント「メイリオ」 | ITmedia NEWS[04]Meiryo font family | Microsoft Learn(日本語版)[05]Meiryo font family | Microsoft Learn(英語版)[06]Tokyo TDC Award 2007 | 東京タイプディレクターズクラブ[07]マイクロソフト、Windows Vistaの日本語フォントをJIS2004対応に | PC Watch[08]MS、「Meiryo UI」フォントを追加するパッチをWindows Vista/2008向けに無償公開 | 窓の杜[09]Meiryo from Microsoft | Adobe Fonts[10]The Meiryo UI font is available for Windows Vista and for Windows Server 2008 | Microsoft Support[11]メイリオ | フォント用語集 | 文字の手帖 | 株式会社モリサワ