AXIS Fontとは
AXIS Fontは、デザイン誌『AXIS』のためにつくられた和文サンセリフ体(ゴシック体)です。タイププロジェクトの鈴木功氏がデザインし、2001年に発表されました。極細のULから極太のHまで7ウエイトで雑誌一冊を組み切る設計と、後に日本語書体で初めて導入された「字幅」の軸が特徴で、クセのないニュートラルな表情から、スターバックスやブリヂストンなど多くの企業のコーポレートフォントにも選ばれています。
誕生の背景
始まりは1998年。アドビでタイプデザイナーとして働いていた鈴木功氏が、新しくつくり始めた書体について意見を聞きたいと、デザイン誌『AXIS』を発行するアクシスのデザイン部門を訪ねたことがきっかけでした。AXIS誌の公式サイトに掲載された開発ストーリーによれば、やりとりを重ねるうちに「いっそAXIS誌で使うことを前提に書体を設計し直してはどうか」と話が進んだといいます。
本文はどのくらいの大きさで組まれるか。見出しは、キャプションは。誌面という具体的な使い道が先に決まっていたことは、設計の助けになりました。鈴木氏自身も「あらかじめ条件が決まっているので、デザインの落ち着きどころがわかりやすかったです」と振り返っています。スケッチから2年をかけて組版テストと修整を重ね、書体は2000年に完成。鈴木氏は2001年4月にタイププロジェクトを創立し、同年9月にAXIS Fontを発表しました。『AXIS』誌は創刊20周年にあたるこの年からAXIS Fontを誌面に採用し、以来一貫して使い続けています。
もうひとつ見逃せないのが、欧文の存在です。欧文部分の制作は、小林章氏が担当しました。和文と欧文の担当者が意見を交わしながらすり合わせた設計は、この書体の混植の美しさを支えています。
設計の意図
タイププロジェクトの公式サイトは、AXIS Fontの特徴を「シンプルで風通しのよいデザイン」と表現しています。白地が生きる字面率(仮想ボディに対する文字の大きさの割合)を設定してすっきりとした表情をつくり、手書きをベースにした骨格に合うよう、点やはらいのストロークにほんのわずかな抑揚を残す。声高に主張しないかわりに、どんな内容にも寄り添える。雑誌のあらゆる記事を一書体で組むという条件が、そのままニュートラルな性格を育てました。
ウエイトは、UL(ウルトラライト)からH(ヘヴィ)までの7段階。発表当時の和文書体としては珍しい構成で、一貫した表情を保ちながら変化に富んだ誌面をつくれます。さらに2007年にコンデンス、2009年にコンプレスが加わり、日本語書体で初めて「字幅」という設計軸が導入されました。単純に文字を圧縮変形するのではなく、漢字は60%、仮名は50%と別々の字幅で設計し直すことで、細くても破綻しない長体を実現しています。この字幅の思想は後に、太さを51段階・字幅を21段階に調整できる「フィットフォント」へと発展し、企業ごとに最適化したコーポレートフォントを生み出す技術になりました。
どこで使われているか
まずは生まれ故郷である『AXIS』誌。2001年から誌面の書体として使われ続け、2024年10月号からは本文専用に調整したフィットフォント「AXIS FF ProN T」が導入されたことが、タイププロジェクトのプレスリリースで発表されています。ひとつの雑誌と書体が20年以上並走している例は、日本では多くありません。
企業での採用は幅広く、タイププロジェクト公式サイトのインタビューで確認できるだけでも、スターバックスコーヒージャパンが日本語のコーポレートフォントとして全資材で使用しているほか、ブリヂストンは2020年の新ブランドアイデンティティで欧文書体に合わせてAXIS Fontを調整した「BridgestoneType TP」を採用、デンソーも2017年からフィットフォントによる「DENSO TP 2017」を全社で運用しています。バルミューダはスマートフォン「BALMUDA Phone」のシステムフォントに調整版の「AXIS Balmuda」を採用しました。防災情報アプリ「特務機関NERV防災」を手がけるゲヒルンも、視認性を理由にコーポレートフォントと画面表示の両方でAXIS Fontを使っています。紙の誌面で生まれた書体が、いまは画面の中の防災情報まで支えている。この移り変わりは、設計のニュートラルさの証明でもあります。
書体そのものへの評価としては、AXIS Fontが2003年、コンデンスとコンプレスが2008年、欧文版のAXIS Latin Proが2010年と、グッドデザイン賞を3度受賞しています。
