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ヒラギノ角ゴシック — 京都の地名から、世界中のポケットへ

SCREEN(旧・大日本スクリーン製造) — 字游工房(鈴木勉・鳥海修ほか) — 1994
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ヒラギノ角ゴシックの組見本
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出典: Adobe Fonts のスクリーンショット(2026-07-19取得・引用)

ヒラギノ角ゴシックとは

ヒラギノ角ゴシックは、京都の印刷機器メーカー・大日本スクリーン製造(現SCREEN)が発注し、設立まもない字游工房が制作した和文ゴシック体です。1994年に完成し、2001年からはMac OS Xの標準日本語フォントとして搭載。いまはiPhoneからMacまで、Appleのすべての画面でこの書体が表示されています。あなたが今日スマートフォンで読んだ日本語も、かなりの確率でヒラギノです。

誕生の背景

1989年、写研出身の書体デザイナー・鈴木勉と鳥海修らが書体制作会社・字游工房を設立します。その直後、京都の大日本スクリーン製造から新しい書体を作りたいという依頼が舞い込みました。当時のDTP環境は本文用書体の選択肢が極めて限られており、発注側の狙いはデジタル時代のスタンダード書体を作ることでした。開発は1990年に始まり、まずヒラギノ明朝体が1993年に発売、角ゴシック体は1994年に完成します。

制作の内実は手仕事の積み重ねでした。仮名のデザインは鳥海修氏が一人で担当し、書道家・石川九楊氏から朱入りで受けた具体的な指摘——筆の返しがない、といった——をもとに修整を重ね、半年をかけて完成させたと本人が語っています

名前の「ヒラギノ」は、大日本スクリーン本社近くの京都の地名「柊野(ひらぎの)」から。ただし土地に直接の縁があったわけではなく、SCREENの担当者によれば、新しい書体のイメージと地名の音の響きが合ったために選ばれたのだそうです。記憶に残りやすく、さっぱりとした音。書体の性格が、名前の選び方にも表れています。

設計の意図

SCREENの公式解説によれば、開発の基本方針は画像と調和しながらくっきりと読みやすい書体を作ること。フトコロ(文字内部の空間)はやや広めに、重心は高すぎず低すぎず視覚的な中位置に、字面はやや大きめに——あらゆる要素を「中庸」に調整する設計です。突出した個性ではなく、どんな場面にも耐える普遍性。開発チームが50年、100年使われるベーシックな書体を目指したという証言も、SCREENへの取材記事に残されています。

転機は2000年2月16日でした。Mac World Expo/Tokyoの基調講演で、AppleのCEOスティーブ・ジョブズが次期Mac OS Xへのヒラギノ標準搭載を発表します。明朝・角ゴ・丸ゴの6書体、OpenType形式、旧漢字を含む最大17,000字。パーソナルコンピュータの日本語表示の品質が、この日を境に変わりました。

どこで使われているか

公式に確認できる採用例は幅広く、性格がよく表れています。Apple製品のシステムフォント(iOS・macOS・tvOS・watchOS)としての搭載が最大の使用例で、Apple Developer公式のフォント一覧にも明記されています。公共分野では神戸市の多言語案内サイン(2017年、ヒラギノUD角ゴ等)、SCREENの年表によれば2010年には高速道路の案内標識の和文書体にも採用されました。ブランド用途では都ホテルズ&リゾーツが指定フォントに採用しています(2019年)。

「東京の駅サインはヒラギノ」といった言説はよく見かけますが、都や鉄道事業者がこれを公式に発表したことはありません。確かめられたのは、東京都公式サイトのCSSでヒラギノ角ゴが第一指定になっていることまでで、物理のサインの話とWebの話は分けて考える必要があります。

FAQ
ヒラギノ角ゴシックは無料で使えますか?

Mac・iPhoneには標準搭載されています。他環境ではAdobe Fonts(CC契約内でProN W3/W6)か、SCREEN直販・Morisawa Fontsでのライセンス取得が必要です。

「ヒラギノ」の名前の由来は何ですか?

京都の地名「柊野(ひらぎの)」です。土地への直接の縁ではなく、書体のイメージと音の響きが合ったために選ばれたと、SCREENの担当者が取材で説明しています。

Hiragino SansとProNは何が違いますか?

いずれもヒラギノ角ゴシックの系統で、Apple製品上での名称の違いです。Apple Developerのシステムフォント一覧に両系統が掲載されています。

SOURCES — 参考文献・出典11 REFS
[01]ヒラギノフォントのあゆみ | SCREEN[02]ヒラギノフォントのデザインについて | SCREEN[03]「ヒラギノ」は京都産業大学の近くの「柊野」が由来!? | 京都産業大学[04]鳥海修インタビュー「書体デザイナーが生み出す、『ふつう』の文字」| TD[05]Mac OS X to Ship with Highest-Quality Japanese Fonts | Apple Newsroom (2000)[06]System Fonts | Apple Developer[07]ヒラギノフォント4書体をAdobe Fontsに提供開始 | SCREEN[08]ヒラギノフォントが神戸の多言語案内サインに採用 | SCREEN[09]「都ホテルズ&リゾーツ」のブランド指定フォントに採用 | SCREEN[10]「Morisawa Fonts」にヒラギノフォントを提供 | SCREEN[11]ヒラギノフォントのルーツを探る | FONTPLUS