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Futuraベースのロゴたち

COLLECTION 02 — 出典の確度(A=公式・準公式 / B=専門メディア / C=観察)を各事例に明記しています

幾何学的サンセリフの代表格であるFuturaは、商業的に極めて成功した書体です。それゆえに「あのロゴはFuturaに似ている」という未検証の言及も、ロゴ紹介ブログにあふれています。各事例の確度はA(公式・準公式の資料)、B(デザイン専門メディア)、C(見た目からの観察)で示しています。並べてみてわかるのは、「Futuraそのものが街角にあふれている」というより、「Futuraという型を土台に、各ブランドが専用の変奏を作り込んできた」という物語のほうが事実に近いということです。

Volkswagen(旧書体 1996–2015)確度A

Volkswagen(旧書体 1996–2015)のロゴ使用例
出典: LucasFonts(デザイナー本人の公式サイト) のスクリーンショット(2026-07-19取得)

Erik Spiekermann率いるMetaDesignが1990年代半ばに手がけたVolkswagenのCI刷新の中で、デザイナーLucas de Grootが「Volkswagen Headline」「Volkswagen Copy」というカスタム書体を制作しました。デザイナー本人が主宰するLucasFontsの公式サイトによれば、1920年代の金属活字の印刷物を参照しながら文字を新たに描き起こしたもので、19年間使用されたのち2015年のリブランディングで廃止されています(制作年についてはLucasFonts側が1996年、Fonts In Use側が1998年と記載が食い違いますが、Lucas de GrootによるMetaDesignでの制作という点は一致しています)。Futuraの正規体・ボールド体を土台にした、専用のカスタム書体でした。

Absolut Vodka

Fonts In Useの解説によれば、Absolut Vodka専用の全大文字書体「Absolut Headline」はFutura Extra Bold Condensedを基に、各文字へ小さなフレア(セリフ状の装飾)を加えたものです。2008年にStefan Hattenbach(MAC Rhino Fonts)がPernod RicardからBrand Unionへの委託で制作し、2020年にBrand UnionとLetters from Swedenが完全に再描画しました。2023年時点のバージョンでも、同じ設計思想が継続されているとされます。

IKEA(Ikea Sans時代 〜2009)確度B

IKEA(Ikea Sans時代 〜2009)のロゴ使用例
出典: PRINT Magazine のスクリーンショット(2026-07-19取得)

デザイン専門メディアPRINT Magazineによれば、IKEAは約60年間使用してきたFutura系書体からVerdanaへ、2009年にブランド書体を変更しました。この変更には数千人規模の反発署名が集まったものの、業績への影響は見られなかった(2010年度純利益は6.1%増)といいます。HYPEBEASTの記事はさらに詳しく、変更前の書体が「Ikea Sans」というFuturaの改変版であったこと、変更理由が「アジア文字に対応できなかったため」だったこと、2019年にはGoogleとMonotypeが開発した多言語書体Notoへ再移行したことを伝えています。

Supreme(Box Logo)確度B

Supreme(Box Logo)のロゴ使用例
出典: Fonts In Use のスクリーンショット(2026-07-19取得)

Fonts In Useの解説は、Supremeのロゴ書体を「Futura」と明記しています。1994年4月が初出で、概念芸術家Barbara Krugerが確立した書体スタイル(赤地に白抜きの太字Futura)を直接的に模倣したものだとされます。同記事は、この状況についてKruger本人が問われた際のコメントも引用しています。

"What a ridiculous clusterfuck of totally uncool jokers." —Barbara Kruger(Fonts In Use「Supreme clothing logo」より)

なお、ロゴ紹介ブログでは「Futura Heavy Oblique」という具体的なウエイト名がよく語られますが、Fonts In Useの記述は「Futura」止まりで、ウエイトの断定は観察レベルにとどまります。

Louis Vuitton

大手タイプファウンドリMonotypeの公式記事「Fashion Fonts」は、Louis Vuittonのロゴについて「LVモノグラム」と「'Louis Vuitton'のワードマーク」を分けて解説し、Futuraがワードマークとテキストに使われ、2つの書体が互いにオフセットして視覚的なバランスを作り出していると記しています。Fonts In UseのLouis Vuittonタグページにはこの件への言及がなく、裏付けはMonotype記事の単独出典にとどまります。

FedEx

デザイン史アーカイブLogo Historiesの記事によれば、1994年にLandor AssociatesのLindon Leaderが手がけたFedExロゴは、Univers 67(ボールド・コンデンスド)とFutura Boldの両方から特性を取り入れたものです。両書体の交差点を探る試行錯誤の末、「E」と「x」の間の負の空間に矢印が発見され、この効果を活かすために2書体の要素を組み合わせた専用のレターフォームに至ったといいます。Univers 67との折衷という性質上、この一覧の中ではFutura色がもっとも薄い事例です。

Swissair(1978)確度B

Swissair(1978)のロゴ使用例
出典: Logo Histories のスクリーンショット(2026-07-19取得)

デザイン史アーカイブLogo Historiesの記事は、1981年の50周年を控えたSwissairが1978年、スイス人デザイナーKarl Gerstnerへ全面的なビジュアルアイデンティティ刷新を委託した経緯を伝えています。書体選定のための広範なテストで、入手しやすく経済的な選択だったFuturaが高く評価され、若々しく・ダイナミックで・自信に満ちていると評されたとされ、12ポイント以上のディスプレイサイズ全般で採用されました。Swissairは2001年に経営破綻し、2002年に運航を終了しています。

Canal+

フランスのブランディングエージェンシーGraphéineの公式記事は、Étienne Robialが1984年に手がけたCanal+のビジュアルアイデンティティで、専用に調整されたFuturaが全体のタイポグラフィシステムとして採用されたこと、当時のライセンス取得費用が100万フラン相当であったことを記しています。同エージェンシーの別記事も、FuturaベースのブランドロゴとしてVolkswagen・Absolut Vodkaと並べてCanal+を挙げています。

Domino's Pizza(旧ロゴ 1996–2012)確度B

Domino's Pizza(旧ロゴ 1996–2012)のロゴ使用例
出典: Graphéine のスクリーンショット(2026-07-19取得)

Graphéineの記事は、FuturaベースのブランドロゴとしてDomino's Pizzaを挙げ、「2012年以前のロゴに使用」と記しています。ロゴ紹介系の複数サイトも、1996年10月の刷新で「Domino's Pizza」のインスクリプションが白抜きのFutura Condensed Extra Boldで組まれ、2012年8月の刷新で退役したと一致して伝えていますが、具体的なウエイト名・制作代理店名の裏付けはロゴ紹介ブログに依っており、この一覧の中でもっとも出典が簡潔な事例です。

Nike(旧ワードマーク 1978–1995頃)確度C

Nike(旧ワードマーク 1978–1995頃)のロゴ使用例
出典: 観察情報 のスクリーンショット(2026-07-19取得)

1978年から1995年頃にかけて、Nikeのワードマーク「NIKE」は修正版のFutura Bold(Futura Extra Boldとする記述もある)で組まれ、Swooshと組み合わせて使われていたとする記述が、複数のロゴ紹介ブログで一致して見られます。ただしこれらはいずれもロゴ紹介・SEOブログの域を出ず、デザイン専門メディアによる直接的な確認は得られていません。1995年以降はSwooshのみの使用に移行しています。

Futuraとよく間違えられるロゴ

Calvin Klein・20th Century Fox(20th Century Studios)・Red Bull・Party City・Best Buy・HP・Diorも「Futuraのロゴ」として語られることがありますが、確かめていくと、多くは裏付けを欠きます。Calvin Kleinは出典同士の記述が食い違い、20th Century Foxは企業ロゴ本体ではなく別用途での使用にとどまり、Red Bull・Party City・Best Buyは専門メディアの裏付けが見当たらず、HP・Diorは公式資料と内容が食い違います。ロゴの書体をめぐる通説には、確かめると崩れるものが少なくありません。Futuraに「似ている」ことと、Futuraで「ある」ことのあいだには、いつも距離があります。

掲載画像は各社公式サイト等のスクリーンショットであり、論評・研究のための引用です。各ロゴ・商標の権利は各社に帰属します。書体の特定は、出典を明記したもの以外は外観からの観察に基づきます。